小生間もなく50歳になる今日まで結婚したことはなく、従って「夫婦間の危機」などというものに対して実感はない。ただし元々他人である男と女が一つ屋根の下同居生活するためにはお互いそれなりの忍耐が必要である筈だ。然るに20年以上出来た筈の忍耐が何故崩壊し離婚に至るのか、単に風潮としてではなく個別のケーススタディを通した上での判断が必要な筈だが、本書はそれを避けて「イザ離婚したらどうなるか、それは女にとって有利か不利か」という、ありきたりの論調に終始しているのがまず書物のクオリティを下げている。著者が女性であることもあって、「離婚することの意義」ではなく「離婚したら女はこうなります」ということを前提とした論調は、熟年離婚のもたらす影響や価値を論ずるのではなく、「いがに女としての不利益を減ずるか」という、女にとって都合の良い議論と資料を並べることによって「金さえあれば女は一人で生きていけるのよ」と、言わんばかりの都合の良い論調には問題の本質を見失った、としか思えぬ。「子育てとローンの支払いさえ終れば亭主なんかいらない」という、世の女の思い上がりとも取れる考えにこの著者も毒されているようである。金が儘ならないのなら亭主をうまく操縦して収入と年金を引き出して、後は自分の好きな人生を楽しみなさい、ではあまりに虫が良すぎはしないか、それで満足できるなら女なんて単純な生き物だ、世間一般の「女の風潮」に対して皮肉を込めてそう言いたくなる。 |